― ボルドー液とホタテパウダーから考える「安全」の考え方 ―
はじめに
最近は
- 有機栽培
- 自然由来
- 無農薬
といった言葉をよく見かけます。
その流れで
「有機農薬=安全」
というイメージを持つ人も多いと思います。
ただ、現場で農業をやっている立場からすると
そこは少し注意が必要な部分だと感じています。
今回は
有機農薬は本当に安全なのか?
という話を、実際に使われている資材を例にして整理してみます。
結論|有機農薬でも「扱い方次第」で危険になる
結論から言うと
有機農薬=無条件に安全ではありません。
有機農薬は
- 自然由来の成分である
- 有機栽培で使用できる
という特徴はありますが、
毒性がゼロという意味ではない
というのが実際のところです。
ボルドー液は有機農薬だが安全とは言い切れない
代表的な有機農薬の一つに
ボルドー液があります。
これは
- 生石灰(酸化カルシウム)
- 硫酸銅
を混ぜて作る農薬です。
生石灰は強アルカリ
生石灰は
強アルカリ性
の物質です。
水と反応すると
水酸化カルシウム(アルカリ)
になります。
取り扱いを間違えると
- 皮膚への刺激
- 目への影響
があるため、現場でも注意して扱っています。
硫酸銅は劇物指定
もう一つの成分である硫酸銅は
劇物指定されている物質です。
つまり
それなりに毒性がある前提で扱うもの
です。
有機農薬でも普通に「強い」
この2つを混ぜたものがボルドー液です。
つまり
有機農薬でも普通に強い資材です。
現場では
- 手袋
- 防護
をして使うのが当たり前です。
自然=安全ではない
ここは誤解されやすい部分ですが、
自然のもの=安全とは限りません。
分かりやすい例として
トリカブト
があります。
自然にある植物ですが
強い毒性があります。
つまり
- 自然由来
- 有機
という言葉だけで
安全かどうかは判断できない
ということです。
ホタテパウダーの正体
最近よく見かける
農薬を落とすホタテパウダー
という商品があります。
これの主成分は
水酸化カルシウムです。
生石灰との関係
生石灰(酸化カルシウム)は
水と反応すると
水酸化カルシウムになります。
つまり
- ホタテパウダー
- 生石灰を水に溶かした状態
は本質的に同じ性質です。
強アルカリで汚れを落としている
水酸化カルシウムは
強アルカリ性
です。
そのため
- 油分
- 汚れ
はよく落ちます。
ただしこれは
アルカリの力で分解している
ということです。
果実のブルームも落としてしまう
ここはあまり知られていませんが、
果物の表面には
ブルーム(天然のワックス成分)
があります。
これは
- 果実の乾燥を防ぐ
- 病気から守る
といった役割を持っています。
ぶどうでいうと
あの白い粉のようなものがブルームです。
ホタテパウダーはブルームも溶かす
ホタテパウダー(=水酸化カルシウム)は
強アルカリのため
このブルームも溶かしてしまいます。
つまり
- 汚れだけでなく
- 果実を守る成分も落としている
という状態になります。
強アルカリをそのまま口に入れるリスク
さらに注意点として、
ホタテパウダーを使った水を十分に洗い流さずに食べると
強アルカリ性の状態のまま口に入る可能性があります。
人間の体は
弱酸性
です。
そこに強アルカリが入ると
- 口の中の違和感
- 粘膜への刺激
につながる可能性があります。
※通常の使用量・正しいすすぎで大きな問題になるケースは多くありませんが、
「安全だからそのままでもOK」と考えるのは危険だと思っています。
実体験|農薬は全部「扱い方」で決まる
現場で農薬を使っていて思うのは
有機・化学に関係なく
すべての資材は扱い方次第
ということです。
- 適正な濃度
- 適正な時期
- 適正な使い方
これを守れば問題は起きにくいです。
逆に
- 濃すぎる
- 使い方を間違える
と、どんな資材でもリスクがあります。
学び|言葉ではなく「中身」で判断する
「有機」「自然」「無農薬」
こういった言葉は分かりやすいですが、
本当に大事なのは
中身(成分)と性質
です。
- 何でできているのか
- どんな性質なのか
ここを理解して使う方が
安全だと感じています。
まとめ
有機農薬や関連資材について整理すると
- 有機=安全とは限らない
- ボルドー液は強い資材
- 自然由来でも毒はある
- ホタテパウダーは強アルカリ
- 果実のブルームも溶かしてしまう
というのが現場の感覚です。
だからこそ大事なのは
過信しないこと
です。
農業でも消費者側でも
「安全そう」というイメージではなく
性質を理解して使う
これが一番事故が少ない考え方だと思います。
このブログのスタンス
このブログでは
- 煽らない
- 断定しすぎない
- でも現場の事実は書く
というスタンスで書いています。
農業は
イメージよりも現実が大事な仕事
です。
今回の話もその一つとして
参考になればと思います。

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